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「昭和8年」を起点に、ジャック・フィニイよろしくモダン都市を散策するブログ

『魔都』の東京を歩く

深川の村林ビルディングから久生十蘭のいた函館へ

日本橋から茅場町を抜け、大正15(1926)年に完成した「復興橋梁」 のひとつ「永代橋」を渡って深川へと入る。すると、「佐賀一丁目南」交差点の一角に、規模はちいさいながら重厚な雰囲気をもつビルディングが姿をあらわす。「村林ビルディング」である。昭…

放送の時代

昭和8(1933)年6月8日の朝は、あちこちの家庭で眠い目をこすりながらラジオにかじりつく人たちの姿が見受けられた。というのも、この日、日本放送協会が戸隠高原から野鳥の声を初めて全国に向け生中継したのである。 去年のオリンピックでは、競技場から実…

昭和9年大晦日の東京會館

久生十蘭の小説『魔都』にはさまざまな建物が登場するが、それらのほとんどは昭和初期の東京に実在した建物である。意図的に実在する地名やランドマーク、人物や事件を巧みに織り込むことで、作者は、フィクションを読ませつつ嫌でも現実を連想せざるをえな…