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「昭和8年」を起点に、ジャック・フィニイよろしくモダン都市を散策するブログ

2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

サーカスがやって来た

宮脇俊三は回想する。昭和9(1934)年、小学二年くらいのときの話だ。 母はサーカスが好きで、かならず見に行き、私も連れて行ってもらった。銀色の海水着のような衣裳をまとったサーカス団の子供が、毬の上で逆立ちなどし、 形が決まったところで「ハーイ」…

永代橋をわたって

時間をさかのぼるとき、映画や小説に「タイムマシン」が登場するように、過ぎ去った時代に思いをめぐらしながら都市を徘徊するときにも、やはりそれなりの「道具立て」があったほうが楽しい。そして「橋」は、ときにそんな〝時間旅行〟ならぬ〝時間散歩〟に…

60年ぶりの眺望

丸の内、八重洲、大手町、日本橋、京橋、銀座… ぼんやり再開発ラッシュのこの界隈を歩いていると、思わずアッと息を飲むようなことがすくなくない。たいがいは、そこにあるはずの建物がすっかり消え失せてなくなっていることに気づき、驚かされるのだ。とこ…

深川の村林ビルディングから久生十蘭のいた函館へ

日本橋から茅場町を抜け、大正15(1926)年に完成した「復興橋梁」 のひとつ「永代橋」を渡って深川へと入る。すると、「佐賀一丁目南」交差点の一角に、規模はちいさいながら重厚な雰囲気をもつビルディングが姿をあらわす。「村林ビルディング」である。昭…

茂田井のパリと日本人会

茂田井武の目玉でもって見たならば、いったい〝1930年の巴里〟はどんなめくるめく世界となってぼくらの目に映るだろうか…。銀座でみた何枚かの『ton paris』からの原画は、たしかにそんなぼくの欲求を少しだけ満たしてくれたけれど、空腹のときにひと匙のス…

東京市深川食堂

日本橋から茅場町を抜け、永代橋を渡って深川にやって来た。しもた屋風の家屋と空き地、新築や高層のマンションが入り混じりつつ点在する風景は、この町が、いままさに〝過渡期〟 にあることの証拠である。空き地や、新築マンションばかりが増えてしまう前に…

落語と自動車

舞台はたいがい江戸時代で、登場人物はみな頭の上にチョンマゲをのせている ーなじみの薄いひとは、たいてい「落語」についてそんなイメージを抱いているのではないか。かく言うぼくもそうだった。聴き込んでゆくうち、実際にはその時代ごとの〝旬の〟トピッ…