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「昭和8年」を起点に、ジャック・フィニイよろしくモダン都市を散策するブログ

2015-05-01から1ヶ月間の記事一覧

まぼろしの万博

日本初の「万博」は昭和15(1940)年、皇紀2600年の記念事業として東京で開催されるはずだった。「はずだった」というのはもちろん、それは実現せず「まぼろし」に終わってしまったからである。 築地にある中央区郷土天文館「タイムドーム明石」ではいま、そ…

郊外に生まれた「浴風会本館」という〝終の住処〟

世田谷文学館への道すがら、ふと思い立って路線バスを降りる。すっかり雨もあがったようだ。停留所の名前は「浴風会前」。ところがどっこい、とても「前」とは言いがたい場所に降ろされてしまった。あわててポケットを探り、Googleマップ搭載のスマホがある…

植草甚一展/芦花公園/《郊外》と田園生活

ミステリ、ジャズ、映画。植草甚一が遺した膨大なスクラップ・ブックを一挙に展示した世田谷文学館の『植草甚一スクラップ・ブック』展は、まるでJ・J氏こと植草甚一のアタマの中を覗き見るかのような好企画、めまいがするほど愉しかった。 京王線の「芦花公…

機能美の果実としての「聖橋」

御茶ノ水の「聖橋」は、復興橋梁のひとつとして昭和2(1927)年に完成した。ニコライ堂と湯島聖堂、ふたつの「聖なる場所」をつないでいるからその名も「聖橋」。山田守が設計した鉄筋コンクリートによるアーチ橋は、〝印象的〟という点でも東京随一といえる…

岩本素白と竹の匙

「竹の匙」という、岩本素白のごくごく短い文章がいい。昭和3(1928)年3月の随想だ。荒物屋で尋ねても、「銀か白銅かニュームの物ばかり」で、ありふれた「竹の匙」がいっこうにみつからない。竹の匙にかぎらず、「簡素なうちに言われぬ味をもった日用品」…